【第3章】「紅茶の国」が抱えていた不条理
当時スリランカで茶葉栽培から製品化までのすべてを行っているブランドは、ひとつもありませんでした。せっかく経験を積んだ人々によって大切に育てられ、丁寧に摘み取られた新鮮なセイロン茶葉が、はるか遠くヨーロッパの国々まで船で運ばれ、すっかり古びてから、インドや中国、ケニアなど様々な原産国から集められた茶葉とブレンドされ、単なる「消耗品」のような質の低い製品となって、有名なブランド名の下で販売されていく。こうして消費者は本物のセイロン紅茶のおいしさを味わうことができず、茶葉を育てるスリランカの人々の暮らしは一向に良くならない。それが、メリルがロンドンで目撃した、多国籍に展開する大手ブランドを所有する貿易業者によって独占された、世界の紅茶産業の実態だったのです。
このままではセイロン紅茶にもスリランカにも、明るい未来はやってこないだろう。そこでメリルは考えました。
もし茶葉の生産地であるスリランカ国内で、製品化までのすべてを行い、新鮮なままに世界中の消費者の元へ、第三国を経由することなく直接お届けすることができたら、消費者は本物のセイロン紅茶のおいしさを楽しむことができ、そして自分たち独自の紅茶ブランドの販売によって得られた利益は、第三国に流出することなくスリランカへ還元され、茶園で働く人々の暮らしを改善することができるのではないかと。
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